高潮は海面の高さ(潮位)が平常よりも高く盛り上がる現象です。
大きな高潮は台風によって生じ、これまでで最高の潮位は4mほどです。
津波は海底下での地震によって生じ、繰り返し来襲する多数の波で、巨大地震では最大波高が10mを大きく超える高さになります。
小貝川低地の標高は龍ヶ崎市域の中央部で4m、東部において2m以下と、高潮の最高潮位よりも低い高さです(図34)。
したがって鹿島灘に大きな高潮・津波が発生し、それによる海面上昇が長時間続いたとしたら、鹿島海岸から45km、利根川河口から60kmもある龍ヶ崎にまで海水が達することはあり得ます。
しかし、これは現実に起こりそうにありません。
台風は低い気圧による海水の吸い上げと、強風による海岸への海水の吹き寄せ、という2つのしくみによって海面を高くします。
したがって台風の最接近時に海面は最も高くなり、台風が遠ざかって気圧が上昇し風速が低下するにつれ海面は下がっていきます。
通常、2時間後には半分程度になり、5~6時間で平常の潮位に戻ります。
海岸や河川の堤防を決壊するなどして陸地内に流入した高潮は、進行に時間を要している間に潮位低下によって海の方へ引き戻されます。
これにより高潮の浸水位はしだいに低下するので(図35の左上)、最高潮位までの標高域が全面浸水することにはなりません。
侵入海水は登り勾配の陸地面を遡上することになり、また引き戻しにより水深は次第に低下するので、進行速度は急速に低下していきます(図35の右上)。
この図の場合、1時間後の流速は毎時1kmほどです。
このため広い緩やかなデルタでは侵入に時間を要するので、到達限界の標高は最高潮位よりもかなり低下します。
平野内にある小河川堤防や道路は浸水位をさらに低下させます。
1959年の伊勢湾台風による高潮は、ゼロメートル地帯が広大な濃尾平野内に15~20kmほど侵入しました。
浸水域限界の標高はほぼ0~1mで、海岸部での最高潮位3.9mよりも大きく低下しました(図35の下の図)。
高潮は河の中を速い速度で遡上しますが、通常の台風による潮位の時間変化では、龍ヶ崎近くにまで到達し河から溢れ出すということは起こりません。
また、鹿島灘海岸では海が東に面しているので、台風が東から西に進行する場合に海岸に向かう強風が生じて大きな高潮になるのですが、台風がこのようなコースをとることは殆ど考えられません。
日本における津波の最大は30mほどですが、高潮とは異なり津波は10分程度の短い周期で上下を繰り返すので、到達はほぼ海岸域に限られます。
東京湾では大きな高潮が起こる危険があります。
1949年のキティ台風高潮は、最高潮位が2.1mと大きくはなかったのですが、敗戦直後で堤防・護岸が弱体化していて決壊し荒川低地に氾濫しました(図36)。
浸水は海岸から最大で14kmにまで及びました。
東京湾に伊勢湾台風級の台風が来襲した場合、3mの高潮が発生するおそれがあります。
この高潮が荒川を遡上し河川堤防を決壊すれば、東京湾海岸から20km近くのところまで浸水が及ぶ可能性があります。
世界的にみて最大の風水害は高潮です。
1970年のバングラデシュ高潮はおよそ50万人の死者を出しました。
2005年のハリケーン・カトリ-ナによる高潮は被害額1千億ドルを超えるという最大の被害をもたらしました。
伊勢湾台風は死者5,100人と日本では最大規模でした。
津波は高さが100mを大きく超えるということはあり得ますが、このような大異変は考えない方がよいでしょう。